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しょや

初夜

山本 周五郎

「週刊朝日春季増刊号」朝日新聞社、1954(昭和29)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,384 字 · 35 页

青空文庫

五

「刃傷の罪も罪、徒党を集めて家にたてこもるのは謀反だぞ」

「徒党を集めたと申すのは注進の誤り、事実は彼の暴挙を防ぐため、彼をとり鎮めるために親族縁者が集まったにすぎません」代二郎はひと膝進めて云った、「――おそれながら私に上使の役をお申しつけ下さい、すぐにまいって彼に詰腹を切らせます」

右京亮は井関と落合の顔を見た。二人がどういう反応を見せたかは疑うまでもない、除村久良馬は練志館の師範で、崇拝する門人も多いし、家中ぜんたいの信望も篤い。討手など出せばどんな騒動になるか、かれらにもよくわかっていたに違いない。右京亮の激昂にもかかわらず、討手を出し渋っていたのはそのためで、代二郎の申し出は、かれらにとってむしろ渡りに舟のようであった。

「その言葉に間違いはないか」と右京亮がこちらを見た、「――間違いなく、彼に詰腹を切らせるか」

「御上意を頂ければ切らせます」

「よし、まいれ」と右京亮が云った、「――上使を申しつけるぞ」

五

「慥かに、承知仕りました、つきましては、――」

こう云って、代二郎は左右に眼をやり、佐藤喜十郎という番頭のいるのを認めた。喜十郎は三百二十石で、徒士組総支配を勤めている、代二郎は右京亮に云った。