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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

「――たいていばかなんですから、お嬢さんが美人でなくったってちっとも気になさることはないですよ」

彼はついに敵を作った。

この邸内でもっとも恐るべき一人、主人の図書助でさえ遠慮すると、玄武社はじめ次席家老にも警告された、恐るべき敵を。……だが当の半之助は平然たるものであった。

口笛でも吹きかねない顔つきで、その後も笙子嬢と出会ったりすると、相手がつんとそっぽを向こうが、噛みつきそうな眼で睨みつけようが、いっさいお構いなしにあいそ笑いをし、

「やあ、いい日和ですなあ」

などと声をかけるのであった。

桜が散り卯の花が散り、五月雨もことなく過ぎた。このあいだに、玄武社から頻りに催促があった。いったいどんなぐあいであるか、そろそろ工作は進んでいるか、うまく運びそうかどうか。

かれらとしては気が揉めてやりきれないらしかった。

「うまくいってます、大丈夫」半之助はいつも悠然と答えた。

「――近いうちにいい知らせが耳にはいるでしょう、もう暫くです」

「笙子嬢を怒らせたそうですねえ」

立原平助がそう云ったことがあった。

「あれほど注意しておいたのに、実にまずいことをしたものですねえ」