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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

屋根の雪がちたちたと解けはじめた。

「んだども、おら達もうんと頑張んなくてはなんないわ。……ない、よっちゃん、おれ、町さなんど嫁に行きたくないのよ、ほんとは。やっぱり一生村で紙漉きをしていたいと思う……。」

ユミがふいに言い出したのへ、よしは咄嗟に応じる言葉がなく、いたずらな狼狽を呑み込んだ。

「よっちゃん、ほんとはおれ……。」

急に切迫したものが痛いほどよしの胸に響いてきた。その次の言葉をきいたら、どうにも始末がつかなくなる予感が閃いた時、よしィと、突然友太のこえであった。ユミのからだがびくッとしたのを明らかに感じながら、高い声を上げたよしはほっとした気持だった。

「なァに兄ちゃ。」

郡山さ行ってくると、友太は小屋を覗き込んだ。

「ユミちゃんもはァ知ってるべが……今日、惣の嫁様つれて来るで、これからよろしく頼むぞや。」

「あら、今日連れて来んの?」

道理で、昨夜は晩くまで何か話し合っていた両親と兄であった。そんな相談にあずかるべき自分でないことはわかっていても、行きしなに、こんな風に言われるのは、よしには何とも面白くないのだった。明日あたり惣吉の嫁を連れて来るつもりだが、よく面倒を見てやってくれと、そう一言言ってほしかった。