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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

六

言うまでもないことで、楮八〇パルプ二〇という障子紙の同じ一号品でも、材料の処理と漉き手の巧拙とによって、玄人ならば一目で鑑別される良否は出来てくる。楮五〇パルプ五〇の二号品には二号品としての良否があるだろう。惣次郎が会心の喜びに人知れず酔うのは、そういう鑑識される紙質の同格に就いてではなかった。はじめはそれが紙裏の刷毛さばきからくる同じ触感のせいかと思った。紙付けをしたのはどちらも母のおときで、二十幾年の彼女の操作は、一分の狂いもないまでに機械化されていた。だが、やはり紙付けなどからくる単純なものではなく、もっと深い、内的なものであることが段々わかってきたのだった。惣次郎にはしかしそれを言い表すことは出来なかった。――それは紙の性格とも言うべきものであった。彼が自分ら親子の紙から感得しているものは、軍需紙にも障子紙にも、或いは一号品にも二号品にも、共通に流れている同じ紙性であった。

六

「小母ちゃん早く来う! 大変だや。」

隣屋敷の家の子が喚いてきて、そこの家の軒下に、うつ伏せになっている惣次郎を見つけたというのである。友太、よし! とおときは突ッ走った声を上げた。