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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

五

チッキの荷物を受け取って、友太は駅前の店に預けて置いた背負繩を持って来た。

「俺が背負うべか。」

「いや、あねさの荷物を持ってくれ。」

腰掛のところで手廻りの荷物を包みなおしていたとしゑが、びっくりして振りかえると、顔を赤くした少年がもじもじと肩を揺すりながら寄ってきた。俺が持ちますと、提灯を持ちかえた手を出されて、としゑは肩掛をとるひまもなく、どうぞよろしくと小腰をかがめるのへ、弟は破れた戦闘帽をぺこんと脱いだ。

駅を出ると肌を刺すような安達太郎颪であった。

五

こまごました繕いものから、まだいいはずの縫い直しなどが次々と持ち出されては、結局、立ち働きをさせまいとする姑の配慮を素直に受けるほかはなかった。

はじめて着いた夜、坂下の暗い道まで出ていて、寒かったべ、寒かったべとくり返した姑は、家に入ると今度は台所の方へ行ってしまって、そこから高い声で喋っているだけで、なかなか炉端に落着かないのだった。そう言えば舅にしても、そわそわと座を立っては奥の間へ行ったり来たりした。実家の様子を訊くのでもなく、今までのとしゑの生活を話題にのぼすこともしない。駅から家までは一里半には少し遠いが、はじめてのしかも夜道では随分遠く思ったろうとか、今夜の寒さはどうだとか、そんなことを独り頷きに話すのである。