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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

二

戦地の惣吉には疾うに知らせてやったとか、それは惣吉も認めてくれるはずで、自分は神に誓って惣吉ひとりをまもっているとか、そんな意味をくどくどと繰り返すのであった。少しも知らずにいたので今まで放っていた、ほんとうに苦労をさせてすまなかったと友太が詫びると、としゑははじめて袂を顔に当てた。

「いいえ、わたし達が悪いんです。……御迷惑なのはわかってますけど、兄さんに御相談するきりなかったんです。」

全く他人であった女から、兄さんにとそう言われて、何かびくッとした新鮮な感情に胸をつかれた友太は、何ということもなく床の間のあたりに目をやりながら、その兄さんという言葉を心の中で反芻した。

二

またはじまった、止めろってばやと、母が時々こえをかけないと、ちょうどいい相手のせんと惣三の口喧嘩には果てしがない。そんなときの二人の仕事は、機械的に手は動かしているものの、とかくまばらに粗皮が残り勝ちで、あとで楮さらしをするよしに、もう一度小言を言われることになった。

木から剥いだままの楮の皮を黒楮と言っている。半日ほど水に浸してから引き上げて、きれいに水の切れたところで、その黒い外皮を除るのが「粗皮除」