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わし
和紙
東野辺 薫
「東北文學」1943(昭和18)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页
友太の方がひがまないで、惣吉がひねくれるのはまるで反対だと、親戚のものがそんな噂をし合ったのは惣吉がまだ十二三の頃であった。
「あんちゃ(兄さん)のおっかァ(お母さん)はおとっさ(お父さん)と兄ちゃを置いて逃げたんだってや? そうだ兄ちゃに俺家の財産みんな譲んのかや、なお母ァ。」
とこんな生意気な憎まれ口を利いたのも、近所の意地悪い中年女にたきつけられてのことであって、やがて高等科を終えて郡山の専売局に勤めた惣吉は、その頃から、友太の生母のことなどはにも出さなくなった。
惣吉に召集令の下ったのは、去年の夏、暑いさかりであった。公用すぐ帰れの電報を打った夕方、八軒町の大谷屋旅館から友太に手紙をよこして、至急来てくれというのである。一里半ばかりの八軒町まで来ていながら、まっすぐ家まで来ないのはどうしたことだと、騒ぎ立てる母をどうやら言いなだめて、友太が大谷屋へ行ってみると、奥の部屋に女と坐っていた惣吉が、てれくさそうに頭をかいた。
友太と惣吉に安達駅まで送られて、その夜女は郡山へ帰って行った。いかにも貧しげで、髪が少し縮れていたが、咲きそこねた何かの花を思わせる美しさがあった。