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わし
和紙
東野辺 薫
「東北文學」1943(昭和18)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页
これからはじめて会う、舅、姑、小姑達にしても、この義兄の蔭に身を寄せたらばと、そう考えられるのであった。
「なあに、村の生活にもすぐ馴れるでな。」
「わたし、何でもするつもりですから。」
「んだげんと、惣が帰るまでは大事な預りものだで。」
いいえわたし、そんなふうにされると困るんですと言うとしゑに、友太は何度も頷いてみせた。
「うちのお父さもお母さも、ちっとも面倒くさくねえで、俺がいうのもおかしいが、ほんとにいい人達だでな。」
そうは言われても、やはり不安でもあり何とも言えぬ心細さで、それはこの義兄にもわかって貰えそうもないのが寂しく、眼を伏せると、小さな駅で別れた惣吉の姿がありありと浮かんでくる。――自分達の過失には違いなかった。だが、としゑは今それを後悔しているのではない。最初からだの変調に気づいた時の打ちのめされた驚愕についで、烈しい悶えに幾夜も眠れなかった末、どうせ諦めるより仕方がないわと、自分を納得させる呟きをするところまで来て、どうやら平静を取り戻した。どんな苦境をも堪え忍んで、お腹の子だけは安らかに産まねばならない。やがてそう勇気を奮い起してからは、思い設けなかったほのぼのとしたものが、彼女の前に開けて来たのであった。