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わし
和紙
東野辺 薫
「東北文學」1943(昭和18)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页
よしとユミはせんを連れて、福島まで映画を観に出かけて行った。嫂さも行かれるといいがとよしがいうのを、こんな様子でどうすんのととしゑは笑った。
「活動なんて、ああだちらちらするものが、はァどこが面白いんだべや。」
姑は、行けないとしゑをいたわるつもりであったらしい。あんなものを観るよりは、寝ていた方がどんなに気楽か知れないというのである。時節柄、改まった年始の客もなかった。どこで御馳走になるのか、赤い顔をして帰ってくる惣次郎は、他愛もなくうつらうつらと炉端で居眠っている。友太は国民学校の集会に何度も出かけて行った。折角ラジオがあっても、電気の昼間線が入っていないので夜しか聴けず、新聞が配達されるのはいつもお昼近かった。今まで遠慮をしていた惣吉への手紙を、としゑははじめて誰憚らず幾枚も書いた。
つつましい村の正月も過ぎた頃から、としゑはこの家での自分のありようにようやく馴染んできた。夜、寝部屋に入ってからは、並んだよしといつまでも話し込んだ。去年はじめて一反三畝の田持になったこともきいた。村には水田が尠いから、食べるだけの小作をすることも出来ないので、米を買って不足を補わねばならない家が、戸数の六割にも上っていた。