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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

「兄ちゃもとっくに嫁とりをしてるとよかったでな。おらが気が利かねえようで外聞が悪いってもんよ。」

ひょっこりとそんなことも言い出して、友太と同年で二人も三人も子供のある誰彼の名を挙げたりした。今年はもう二十七でしかも相続人なのだから、村の風習からすればたしかに晩れているのである。その話になると当の友太がいつも煮え切らないので、ついそのままになってはいたものの、夫に死なれてみると、おときはなにか自分の落度ででもあったように、急に気になり出すのであった。それに、夫の生前には友太に対しても、ついぞ気がねというものを覚えたことがなかったのに、ひとりになると、どういうものか、言いたい言葉もふっと呑み込んでしまう遠慮が、いつの間にか出来ていた。もとより友太の様子に何の変りがあるはずもなく、お父さが死んだので、自分まで馬鹿になったのだとおときはひそかに思うのである。

目に見えて苛々してきた母に、一番困らせられるのはやはりよしととしゑであった。

「お父さが死んだら、お母さは何だって愚痴っぽくなったんでないの。」

そばのとしゑをはらはらさせながらよしが言うと、

「誰のお蔭でそれまでの娘になったんだ、よし!」