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わし

和紙

東野辺 薫

「東北文學」1943(昭和18)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页

青空文庫

――友太に再度の召集が下ったのである。

「お母さ、いいかや、俺ァまた征くだぞ。」

と、大きく眼を見開いた友太に赤い紙を振られた時は、はっと胸を衝かれてしまって、阿呆のように口を開けた。今までには村にも二度目の応召者は幾人かあって、そうだ、その覚悟だけはと考えることはあっても、おときのような女には、やはり現実感としては迫っていなかったので、それがいきなり目前に立ちはだかったのだ。待ってくんろと言っただけで、がくんとしそうなからだをやっと寝部屋に運んだおときは、くたくたと膝を折りながら、お父さ、お父さと呟いた。しばらくの間じっと動かずに眼をつぶっていたが、

「んだか、んならおらにも料見があるでな。いいともや、お父さも見てくんろ、おらだって満更馬鹿なおなごでもねえからや。」

と、今度は少し高い声で独りごちした。

駈けつけて来た組合長の安斎保男氏は、炉端のよし達を忙しく見廻した。お母さはどうしたと訊いて、こんな場合に寝ているとは何とした事だと、遠慮もなく奥へ入って行くと、ちゃんと坐っていたおときから、はっきりした声をかけられた。

「旦那さ、うちの軍需紙はどうなりやすべ?」