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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
十数名の警官隊は、治良右衛門を囲んで、身動きすれば取りひしがんと構えていた。
「ホラ、これを見給え。これは何だ」
治良右衛門が指し示したのは、繋留柱にとりつけてある、一箇の大型のスイッチだ。
「このスイッチが何を意味すると、諸君は思う、このスイッチこそ、ジロ楽園建設の最終目的を暗示するのだ。このスイッチの金属に火花が散る時、アア、ジロ楽園にはどの様な地獄風景が現われることだろう。僕はそれを思うと嬉しさに胸が破れ相だ。諸君にその光景が見て貰い度いのだ。それ故にこそ君達をここまでおびき寄せたのだ」
警官達は何とも知れぬ不安の為に、ジリジリと油汗が湧き出すのを感じた。彼等の目はスイッチに釘着けになった。「あのスイッチを入れさせては大変だ」という考えが、一同の胸をワクワクさせた。
「イヤ、これじゃない。スイッチそのものを見てくれというのじゃない。諸君はうしろを見るんだ。この丘の上から、ジロ楽園の全景を見渡すのだ。サア、今だ。今こそジロ楽園の最後の時だ」
叫びも終らぬに、スイッチに、パチッと火花が散った。人々は殆ど反射的に、うしろを振返って、楽園の全景を眺めた。