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じごくふうけい

地獄風景

江戸川 乱歩

「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页

青空文庫

大鯨の心臓

そして、当の湯本譲次が唯一の被疑者として引致せられたことは云うまでもない。

大鯨の心臓

木島刑事は、検事や警察の人々と一緒に楽園を立去ろうとはしなかった。署長の命令もあったし、彼自身も、まだこれで、事件が解決したとは信じていなかったからだ。

その午後、彼は一人で、園内をブラブラ歩いていた。

ふと気がつくと、彼の面前に、真黒に塗った漆喰の小山の様なものが横わっていた。全然黒く塗りつぶした中に、ただ一点しみの様な白いものがあった。それがこの怪獣の目だ。作りものの大鯨が、小さな白い目で刑事を睨みつけていたのだ。

目の下の口の辺にポッカリ開いた黒いほら穴が、鯨の胎内への入口だ。刑事はその内部の不思議な光景をよく知っていた。大人をもひきつける不気味なお伽噺の世界だ。

彼はその胎内へ這入って見る気になった。黒いほら穴をまたいで、大鯨の口を這入ると、そこに不気味なでこぼこの大きな喉があって、それから、やっと一人通れる位の食道の細道が、ズッと胃袋まで続いていた。

露出した電燈は一つもなく、光源は皆臓器の繊維の内部に仕掛けてあるので、それが青黒い粘膜を通して、曇り日の様な薄あかりを行手に漂わせていた。