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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页
へ着いたものが勝ち、という障害物競走だ。
ただの駈っこなら、折枝は到底雷蔵の敵ではない。現に出発間もなく、雷蔵は数メートルも先に走っている。だが、折枝は迷路の中での智恵比べで、先着になる自信があった。迷路については大ざっぱな男よりも、案内を知っている積りであった。
彼女は、雷蔵よりは遙かにおくれながら、でも失望することなく、約束に従って東の入口から、迷路にかけ込んだ。
半間程の、曲りくねった細い通路の両側には、陽をさえぎって、見上げるばかりの丈余の生垣だ。生垣と云っては当らぬ。向側を透して見ることも出来ぬ、ビッシリと枝を交え、葉を重ねた大木の行列だ。それに茨が細い網を張り、蔦がからみ、分けて出ることは勿論、昇りついて越すことも、全く不可能になっている。そんな風にして逃げ出せるのだったら、迷路の意味を為さぬからだ。
一歩迷路に踏み込むと、樹木の高塀の陰影のせいか、夕方の様に薄暗く、寒々として、その上何とも云えぬ、押えつける様な静けさだ。園内の花火場で、誰のいたずらか、時々、ドカーンと花火を上げる音の外には音もない。案内は知っているつもりでも、歩いている内に、いつしか道に迷ってしまった。