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じごくふうけい

地獄風景

江戸川 乱歩

「江戸川乱歩全集付録冊子 探偵趣味」平凡社、1931(昭和6)年5月10日~7月10日、9月10日~1932(昭和7)年1月8日、3月10日<br>メリー・ゴー・ラウンド以下「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,774 字 · 108 页

青空文庫

それから、水着の娘さんが、道化服の老人が、赤マントの闘牛士が、まるで機関銃にでもうたれる様に、パタリパタリと、足を空に向けては、丘の向側に消えて行った。そして瞬く間に十人の的が、地平線から一掃されてしまった。

砲手がいつの間に玉をこめたのか、玉がいつの間に筒口を飛び出したのか、目にも止まらぬ早業であった。

ゴム風船は絶間なく飛び上り、花火は続けざまにうち上げられ、降りしきる五色の雪と、昇る五色のゴム風船とが、空中に入り乱れて戦った。

「ワハハハハハハ、愉快愉快!」

治良右衛門は、子供の様に躍り上って喜びながら、大砲の側を離れて、彼方の群集の方へ走り去った。走り去る彼の右手に、何かしらキラキラ光るものが、銀色の虹の様に輝いていた。

×     ×     ×     ×     ×

誰もいなくなった大砲の側に、妙な顔をして突立っている一人の男があった。不気味な泥棒の扮装をした木島刑事だ。

「まるで気違いだ。友達が幾人も殺されて、その血の匂もうせぬのに、この馬鹿騒ぎは、正気の沙汰じゃない」

刑事には、楽園の人々の気持がまるで分らなかった。全然別世界の人類としか思われぬのだ。