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つぼ

壺

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1940(昭和15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,624 字 · 34 页

青空文庫

八

と呼びかける声がした、かれは鍬を手にしたままふり向いた、いつ来たものかそこに又右衛門が立っている、「わたくしがどうか致しましたか」「……おまえはたしか壺を捜している筈だな」「いかにも仰せのとおりでございます」「たしかに」又右衛門は念を押すように云った、「よし、もういちど掘ってみろ」なにがそんなに不審なのかわからず、七郎次は再び鍬をとりあげて土へ打ち込んだ、三打ち、五打ち、すると又右衛門が押し止めるような調子で「……なぜその草を投げるか」とこえをかけた。七郎次ははっとおのれの手を見た、自分でも知らぬ間に、掘り返した土塊の中から雑草の根を抜きとって投げようとしていたのである、かれは又右衛門へふり返った、「……おまえは壺を捜すために土を掘り返している」と又右衛門が云った、「……それなら掘り返しさえすればよい筈だ、なんのために草を抜き捨てるのか」

八

「草だけではない、おまえはひと鍬おこす毎に瓦礫まで選りだして遠くへ投げ捨てていた、それも今日はじめたことではなく、もう十日以上もおなじことをやって来た、みろ七郎次、おまえの掘り返した