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つぼ

壺

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1940(昭和15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,624 字 · 34 页

青空文庫

六

ことができたとして、それからさきはどうするつもりだ」「はい、わたくしの身にかなうほどは、たとえ軽輩なりとも武士になりたいと思います」そう云いながら縋るように見あげる眼は、ひたむきな心をそのまま表白するようだった。又右衛門はその眼をじっと見おろしていたが、やがておぬいに向って、「おまえも来るか」と訊ねた、そしておぬいがはいと答えるのを待って、はじめて「ゆるす」と云った。「では望みどおりつれてまいろう、初めに断っておくが、どんなことがあっても不平不満をもらしてはならぬ、また又右衛門がよしと申すまでは身を退くこともならぬ、この約束ができるか」七郎次はよろこびの色のあからさまな面をあげて、「お申しつけは必ず守ります、どんな辛抱も致します、どうぞおつれ下さいまし」と云った、「よしそれではまいれ」

望みのかなったよろこびはおぬいの顔をも耀かせた、又右衛門はしかしそれには気もつかぬようすで、埃だつ道をもうさきにあるきだしていた。

六

又右衛門の住居は侍屋敷のはずれにあった、家は古びてもいたし手狭でもあるが、広い庭には樹が多く、そのなかに六七百年も経たかと思える