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なつくさせんき
夏草戦記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1943(昭和18)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,107 字 · 41 页
銃隊を先頭に、槍組、抜刀隊とつづき、そのあとから足軽たちが荷駄を曳いて、土埃をあげながら遠ざかっていった。
その小さな部落は、かくてまた元のようにひっそりとなり、高原の乾いた道の上には、ときおり吹き過ぎる微風がくるくると埃の渦を巻きあげていた。小谷隊が去ってから一刻ほども経って、その乾いた道をひとりの娘がその部落へはいって来た。背中に包みをゆいつけて、笠も着物も埃まみれになって、……草鞋の緒にでも食われたのであろう、右足を少しひきずるようにしてとぼとぼとあるいて来た。そうして村はずれへさしかかると、そこに遊んでいた四五人の子供たちに呼びかけた。
「おまえさんたち、此処をたくさんのおさむらいが通ったのをお見でなかったかえ」
「通ったんじゃないよ」子供たちのひとりが不平そうに答えた、「おさむらいさんたちは此処で泊ったんだよ、おらの家なんかいちばんえらい人が泊ったんだぜ、なあ」
「そうだ、二人もだなあ、兄やん」
娘はそうと云って微笑した。
「それでその方たちはもうごしゅったつなすったの」
「ああいっちまったよ、いくとき家へ泊ったえらい人がおらに銭をくれたっけ、でもお祖父さんが銭を持ってちゃいけないって取りあげられちゃった。