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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
04 第二部下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页
まったく神仏を混淆してしまったような、いかがわしい仏像なぞの家にあるものはこの際焼き捨てる――この半蔵の考えが伊之助を驚かした。しかし、伊之助は平素の慎み深さにも似ず、これは自分らの子供たちを教育する上からもゆるがせにすべき問題でないと言い、これまで親しいものの死後をあまり人任せにし過ぎたと言い、旧宿役人時代から彼は彼なりに在家と寺方との関係を考えて来たとも言って、もし旧本陣でこの事を断行するなら、伏見屋でもこれを機会に祭葬の礼を改めて、古式に復したいと同意した。
半蔵は言って見た。
「やっぱり伊之助さんは、わたしのよい友だちだ。」
今は彼も意を決した。この上は、伊之助と連れだって、今度の布告の趣意を万福寺住職に告げ断わるため、馬籠の北側の位置にある田圃の間の寺道を踏むばかりになった。
万福寺の松雲和尚はもとの名を智現という。行脚六年の修業の旅を終わり、京都本山の許しを得て名も松雲と改め、新住職として馬籠の寺に落ちついたのは、もはや足掛け二十年の前に当たる。
あれは安政元年のことで、半蔵が父吉左衛門も、伊之助が養父金兵衛も、共にまだ現役の宿役人としてこの駅路一切の世話に任じていたころだ。