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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

七万両の宝

性格の破産者と信用の破産者、何方も触れば棘の突ささるような二人が、斯うして共同戦線を張ることになったのです。

七万両の宝

「もう少し詳しく話しておくんなさい。絆纏一枚が惜しいわけじゃねえが、七万両の夢を見て、風邪を引いちゃ割に合わない。これは一体どうしたことなんで? 旦那」

厄介の貝六は、店の中に誰も居ないのを見定めると、盃を置いて赤崎才市の方へ膝を寄せるのでした。小田原の町外れ、上り下りの客に、一番安くて盛沢山な中食を食わせようという、一ぜん飯屋の奥、煮しめたような茣蓙の上に列んで坐って、宜い加減陶然とした二人でした。

「誰も聴いちゃ居まいな、貝六」

「時分時でないから大丈夫でさ、猫の子が一匹耳をすまして居るだけだ、勘定が済んだら、親父は安心して奥へ引込んだし、小女はつまみ食いで大童だ、耳なんか節穴ほどの役にも立たねえ」

店の内外を一とわたり見極めて、貝六は元の席に帰って来ました。

「それじゃ話して聴かせる、驚くなよ、貝六」

「驚くな――たって、眼なんか据えて乗出されちゃ大概肝を冷やすぜ、旦那、あまり結構な人相じゃねえ」

「無駄を言うな、――手前の守り袋か臍の緒書きの中に、得体の知れないものを描いた、変てこな紙片が入っちゃ居ないか、――先ずそれから聴こう」