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おおえどおうごんきょう
大江戸黄金狂
野村 胡堂
「新青年」1939(昭和14)年11月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页
赤崎才市へも一通
そう言い乍らも、貝六はすっかりじれ込んで居りました。
「こんな手紙を、唯で読んじゃつまらないねエ、少し何んとか色をつけなよ、親分」
「何を言やがる」
「斯うだよ、親分、――『ちょいとけえ六親分、私と世帯を持つ気はないかえ、気が向いたら箱根へ来なよ、たいこう道の辻堂の前へ、十五日のお月様の晩、日の暮れるころ、良い男の親分の顔を持って来なよ、――小田原のあの子』とね」
「小田原のあの子、はてな?」
貝六は小首を傾げました。小田原の飯盛に嫌がらせをしたのは幾人もありますが、箱根の山の中へ呼出されるほどの深間は一人も無かったのです。
厄介の貝六は狐につままれたような心持でフラフラと外へ出ました。
赤崎才市へも一通
「貝六」
押し冠せるように野太い声、
「何をッ? 間抜け奴ッ」
反抗的に肩を聳やかせて、ヒョイと顔を挙げると、眼の前にヌッと立ったのは、定九郎を素で行ったような、恐ろしく自棄な浪人者でした。
「大層な機嫌だな、貝六」
「おや、赤崎の旦那で?」
貝六は拳固でペロリと顔を撫で廻しました。この凄味な浪人者赤崎才市には頭の上らない理由がありそうです。
「旦那って程の面じゃねエが、間抜け奴は挨拶だな」