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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

厄介の貝六へも

龍之助を助け度いと思うなら、直ぐ様後を追うがよい。南蛮渡来の短筒を一挺貸してやる。これさえあれば、女の細腕一つでも大の男に向うことが出来る筈だ――。

あまりにもよく行届いた文章、誰の仕業ともわかりませんが、万田龍之助ゾッと肌寒さを覚えました。

「短筒というのは?」

「これでございます」

お染は重そうに持って来た包を解くと、中から現われたのは、金銀の象眼を施した、南蛮物の凄まじい短筒が一挺、万田龍之助は、自分が引ずられて行く運命の恐ろしさに、何んとなく身内の顫えを感じます。

短筒を取上げて、巨大な蟲ででもあるように、無気味な心持で見極めた龍之助は、

「何が行手にあるか少しも解らないが、兎も角私は行って見る外はあるまい。お染殿はなる可く此処から戻るのだ」

「でも龍之助様」

お染は鉄砲を掻い抱く恰好で、クネクネと身体を振ります。

「母上が御心配なさるだろう」

「いえ、母様へもそう申して参りました。母様は――龍之助様先途を見届けるのはお前の役目、私は決して止めはしない――と仰しゃいます」

「――――」

龍之助は涙ぐましい心持でうなずきました。

厄介の貝六へも

人呼んで厄介の貝六、海道筋でよくない事ばかりしている中年男のところへも、仮名書きの不思議な手紙が届けられました。