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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

第二の手紙

時は正徳三年八月の初め、七代将軍家継の時代、江戸は驕者の坩堝となって、何処の社会でも、金が慾しくて慾しくてたまらなかった頃のことでした。

浪人者のみじめさは、こんな時ほど身に染みます。腕に覚があったところで糊米ほどの祿を出して召抱える大名もなく、棒振剣術の道場は、稲荷の祠と数を争う江戸の街で、浪人者の生活の足しになる仕事などは、金の草鞋で捜しても見付かりません。下手な謡曲などを唸って、一文二文の合力に命を繋ぐより、思い切った敵討にでも出逢わして、威勢よく死んで了え――。

山浦丈太郎ならずとも、落ち果てた浪人者が、そう言った心持になるのは無理のないことでした。

第二の手紙

武州八王子にこれも佗しく暮している浪人者、万田龍之助も、同じような手紙を受取りました。

其方も最早十八歳ではないか、親の敵の山浦丈太郎が、目と鼻の間に居るのに、何んという不甲斐のないことだ。父親の九郎兵衛に少しばかりの非曲はあったかも知れないが、それを洗い立てた上に、手に掛けて殺したのは山浦丈太郎だ。その敵も討たずに、お染の愛に溺れ、八王子から一歩も踏み出す心の無いのは、何んという見下げた性根であろう。