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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

04 枕の妖異

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,545 字 · 23 页

青空文庫

庵室の清玄のように痩せ細って、腑甲斐なくもお綾のおもかげを追い続けましたが、困ったことに人間は自分の思うがままの夢ばかりは見られず、唯身を焼く懊悩に委ね切って、半病人のような日を送っておりました。

一方秋月九十郎は、一日一日と狂気になって、酒に親しむ日ばかり続きました。二人共勤めを怠り果てて、最早人がましい性格も失い尽くしたように見えるのです。

一と月あまり経ったある日、秋月九十郎は曾ての恋敵妻木右太之進を、湯島金助町の屋敷に訪ねたのは、何んという風の吹き廻しでしょう。

「これはこれは」

妻木右太之進は、あわてて月代を剃り、衣服を改めて、秋月九十郎を待たせてある座敷に現われました。

「拙者が直々に参るのは、まことに異なものでござるが、今となっては最早や怨も憎しみも無いお互いでござる――」

「いかにも」

秋月九十郎の言葉の異様さに、妻木右太之進は引摺られるように相槌を打ちました。

「ところで、これから先、どのようにして世を過ごしたものであろうか。武士は相互い、膝突き合せて御相談をいたそうかと、昔を忘れて参った次第でござるよ」

「成程」

「お互の悩みを知るものは、お互の外には無い。