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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
04 枕の妖異
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,545 字 · 23 页
「――――」
「これを試みる人は、枕の真ん中を横に貫く銀の棒を抜いて火に温め、人間の手で握れないほどの熱さにして元の通りに差し込み、そのままこれを枕にして眠ると、望むがままの夢――栄耀、歓楽、思う通りの夢が見られるということだ。拙者の父が一度試みたというが、あまりの甘美な夢に驚き怖れ、これは子孫を毒するものとして堅く戒めて置いたため、拙者は一度も試みる折は無かった」
「――――」
秋月九十郎の話はあまりにも奇っ怪です。妻木右太之進、驚き呆れて九十郎の顔と美しい枕を見比べるばかりでした。
「この枕を貴公に進呈しようと思うがどうだ。受けて下さるか」
「えッ?」
右太之進はツイ両手を出しました。
「その代り拙者の方にも望みがある」
「その枕の効能に欺りが無かったら、何んなと望みに任せて進ぜよう。金でも、道具でも――」
「いや、そんな物ではない、拙者の望むのは、貴公御自慢の一と腰、妻木家の重代という、彦四郎貞宗の一刀だ」
それは実に驚くべき望みでした。彦四郎貞宗は稀代の名刀で、妻木家の代々は、東照権現からの拝領品として、どんなに大切にして来たことか、妻木右太之進は知り過ぎる程よく知って居りました。