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おんなはおなじものがたり

女は同じ物語

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页

青空文庫

五

広一郎は乱暴にゆり起こした。要平は眼をさましたが、起きあがるまで呼び続けた。

「起きたよ」と要平は云った、「ちゃんと眼をさまして、このとおり起きてるじゃないか、なんの用ですか」

広一郎は用件を云った。要平はどろんとした眼で、訝しそうに彼を見た。

「わかった」と要平は云った、「しかしなんの用ですか」

広一郎は「そのとき話すよ」と云い、そこを去った。

午後五時すぎ、城下町の北にある陣場ヶ岡で広一郎と村田三郎助が待っているところへ、佐野要平がやって来た。

「おそいぞ」と広一郎が云った、「必ず五時にと云った筈だ、支度しろ」

そして彼は襷をかけ汗止めをし、袴の股立をしぼった。要平はあっけにとられ、ぽかんと口をあいて見ていた。「支度をしろ」とまた広一郎が云った。なんのためだ、と要平が云った。いいから抜け、勝負だ。わけを云わないのか。そっちに覚えがある筈だと広一郎が云った。要平は当惑した。

「原田を殴った件か」と要平が云った、「それならあやまる、おれは酔っていたんだ」

「そんなことじゃない」

「では茶庄のおしのを裸にした件だな」

五

広一郎は首を振り「違う」と云った。

「すると駕籠辰から金をまきあげた件か」