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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页
七
着物も屋敷にいるときとは違って、色彩の嬌めかしい派手な柄だし、町ふうに結んだ帯もひどくいろめいてみえた。
「きれいだね」と彼は云った、「――じつにきれいだ」
「うれしゅうございますわ」
「眼がさめるようだ」
広一郎はしんけんにそう云った。紀伊はそれをすなおにうけとり、すなおによろこんだ。
だが、いつのまに来たのか、と広一郎が云った。はい駕籠をいそがせて、おさきに来ていました。では途中で会ったんだな。はい途中でおみかけ致しました、と紀伊が云った。大榎のところで立停っていらっしゃいましたわ。うん、――引返そうかと迷っていたときだ、と彼は心のなかで思った。
「お湯へいっておいであそばせ」
「いや」と広一郎は云った、「湯はあとだ、少し話をしよう」
「わたくしもうかがいたいことがございますわ」
「なんでも話すよ」と彼は云った、「座敷へはいらないか」
七
二人は坐って話した。
紀伊が訊いた。世間ではあなたが女嫌いだと噂している、自分にはそう思えないが、なにかわけがあるのか。広一郎は「ある」と答えた。聞かせて頂けますか。いいとも。どういうわけですの。正直に云ってしまう、それは或る一人の娘のためだ。