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おんなはおなじものがたり

女は同じ物語

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页

青空文庫

「ちょっと、ちょっと待ってくれ」

「手をひけ、佐野」と広一郎は云った、「おとなしく手をひけば、きさまの呑み代はおれが月々だしてやる」

「なんだって」要平はごくりと唾をのんだ。

「多くは遣らない、月に一分ずつ呑み代をやる、それできっぱり手をひくか、どうだ」

「そっそれは慥かでしょうな」と要平は云った、「た、慥かに一分ずつ、呉れるでしょうな」

「手をひくか」

「慥かに貰えるなら、――承知します」

「おれは武士だ」

「よろしい、私も武士です」

向うで三郎助がにっと苦笑した。要平は眼ざとくそれを見「笑いごとじゃあないぜ」と渋い顔をした。

「笑いごとじゃない」と要平は云った、「いまの契約にも、村田は証人だぞ」

三郎助は「いいとも」と頷いた。広一郎は刀をよくぬぐって、鞘におさめた。それから身支度を直し、ふところから紙入を出して、一分銀を懐紙に包んで要平に渡した。

「今月の分だ」

「いやどうも」と要平は頭を下げた、「――慥かに、……して、あとはどういうぐあいに呉れるんですか、こっちから訊ねていっていいんですか」

「月の五日に来れば渡す」

「五日ですな、わかりました」

「ひとつ注意しておく」