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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页
そうだと思いました、と紀伊が云った。それはあなたの許婚者で、安永つなさんと仰しゃる方でしょう。なんだって、――広一郎は吃驚した。どうして紀伊はそれを知っているんだ。わたくしあの方とお稽古友達ですの、お琴、お茶、お華、みんな同じお師匠さまでしたわ、と紀伊が云った。それに、二人は姉妹のようによく似ているって、みんなからよく云われました。そうかな、私にはそうは思えないがな、と広一郎が云った。親しくはなかったろうな。どうしてですの。あれは気の強い意地わるな娘だった。あら、そうでしょうか、わたくしたいへん仲よくして頂きましたわ。あれは気の強い意地わるな娘だった。どんなふうにですの、と紀伊が訊いた。
「私はいまでもよく覚えているし」と広一郎は云った、「それを思いだすたびに、口惜しいような憎らしいような気持になることが幾つかある」
「うかがいとうございますわ」
「私は蛇が嫌いだ」と広一郎は云った、「蛇を見ると、いまだに私は躯じゅうが総毛立つくらいだ」
十二歳の年だった。彼が安永の家へ遊びにいったとき、つなが「面白いものを見せるからいらっしゃい」と云って、彼を庭へさそいだした。