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おんなはおなじものがたり

女は同じ物語

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页

青空文庫

と命令した。彼は狼狽し、いやだと云って逃げた。するとつなは顔をしかめて軽蔑し、またしても「男のくせにいくじなしね」とからかった。

「そういうことは誰にもありますわ」と紀伊が云った、「そのくらいのじぶんは、なんとなく躯に興味があって、お互いに躯を見せあいたくなるものですわ」

「紀伊もしたのか」

「あら、――」と彼女は赤くなった、「いまは若旦那さまが話していらっしゃるのでしょう、わたくしのことはあとで申上げますわ」

「うん」と広一郎は云った、「だがかんじんなのはそのことじゃない」

躯の比べっこで逃げたあとで、つなが「いいことを教えてあげましょうか」と云った。いいことってなんだ、彼は警戒した。つなは肩をすくめ、くすくすと笑った。そして、潜りっこをあんなふうにしては負けるにきまっている、途中で頭を出して息をするのだ、と云った。あたしなんか二度も三度も頭を出して息をした。あなたはばか正直で、「お知恵がないのね」と云うのであった。

「私は口惜しかった」と広一郎は云った、「いつかはやり返して、こっちで笑ってやろうと思った、ところがいつもやられてしまう、笑われるのはいつもこっちなんだ」