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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页
赤根の湯から二人の心はもっとぴったり触れあうようになり、しばしば、ちょっと眼を見交わすだけで、互いの気持が、ごく些細なことまでも、通じあうようになった。そして、十一月中旬の或る午後、――ちょうど広一郎の非番の日であったが、二人は庭の奥で少しながく話す機会があった。そこは北斗明神といって、梶家代々の氏神の祠があり、若木ではあるが杉林に囲まれていた。北斗明神は梶家がどこへいっても祭るもので、十幾代もまえからの氏の神だということである。
「わたくし、うかがいたいことがあるのですけれど」と紀伊が云った、「このまえ赤根の宿で、つなさまのことを仰しゃってましたわね」
広一郎は頷きながら、紀伊は日ましに美しくなるな、と心のなかで思った。縹緻もよくなるばかりだし、こんなにやさしい、気だてのいい娘はない、なんという可愛い娘だろうと思った。
「若旦那様はそのために、つなさまとも御結婚なさらないし、女嫌いになっておしまいなすったのでしょうか」
広一郎は「ん」と紀伊を見、それから自分が質問されていることに気づいた。
「うん、いや、それもあるけれど」と彼はちょっと口ごもった、「ついでに正直に云ってしまうと、――私の母のこともあるんだ」