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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 页
「奥さまのことですって」
「紀伊だから云ってしまうが、母がどんな性質の人かわかるだろう」と広一郎は云った、「私はずっと父と母の生活をみて来た、そして、いつも父を気の毒に思った、……表面は旦那さまと立てている、父はいかにも家長の座に坐っている、しかし」と彼は首を振った、「じっさいはそうじゃない、城代家老としては別だが、私生活では母の思うままだ、すべての実権は母が握っている、父には、母のにぎっている鎖の長さだけしか自由はないし、その鎖で思うままに操縦されている」
「それはお言葉が過ぎますわ」
「父だけではない、どうやらたいていの男がそうらしいよ」
「あんまりですわ、それは」
「猿廻しは猿を太夫さんと立てる、そして踊らせたり芝居をさせたりして稼がせる、――よく似ていると思わないか」
「でも、――」と紀伊が云った、「ぜんぶの女がそんなふうだとは限りませんわ」
「たとえば紀伊のようなね」
「あら、あたくしなんか」
「私は紀伊となら結婚したいと思う」
紀伊は「まあ」と云って赤くなった。広一郎も自分の言葉に自分でびっくりした、深い考えもなく、すらすらと口から出てしまったのである。