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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

双方勝り劣りのない重態で、一時は会社でも何方が早く片付くだろうかと噂をしていた。しかし里方総出の看護が効を奏して、妙子さんの熱が先ず分離し、それから三日目に清之介君のが分離した。何うしても細君本位の家庭と見えて、良人は後になる。

談話をしても差支えない程度まで元気づいた時、未だ毎日采配を振りに来る母親が二人の病室の仕切りになっていた襖を外してくれた。

「妙子さん、もう御安心でございますね」

と清之介君が先ず御機嫌を伺った。

「宜うございましたわね。あなたも」

と妙子さんは同慶の意を伝えた。

「私、もうお目にかゝれないと思いましたのよ」

「私も。でも最早大丈夫でしょうね?」

「大丈夫でございますとも」

「飛んだお土産を持って来て真正にお気の毒でしたわね」

「いや、何う致しまして」

と清之介君は死ぬほどの目に会わされても一向意に介していない。

肥立ちに入っても用心の為め双方に看護婦が附き添っていたから、清之介君は細君と打ち解ける機会がなかった。随って矢張り女房と思えない。依然として支配人の令嬢「妙子さん」の「あなた」だった。尚お具合の悪いことには東京に身寄りのない清之介君は、この大患の間何彼につけて細君のお里に負うところが甚だ多かったのである。