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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

猫も杓子も手を出すようになると択り古しばかりで好い柄がない。女は買って来た柄が直ぐ気に入らなくなること真に不思議である。

「あなたが早く買いにやって下さらないから、私はいつも同じお金を払って柄の悪いものばかり背負い込むんですわ」

と常々千吉君にこぼしている安子夫人は、昨夜思いも設けず白米二俵を唯せしめた時今日の三越を頭に描いた。内藤夫人にしても御良人から慰藉料を、頂戴したのか強要したのか、兎に角たんまり手に入れた折、今日の三越を念頭に置いたに相違ない。そこで意気懐中共々全く投合した両夫人は手を取るようにして階段を下りると、もうソロ/\出始めた薄物を漁って歩いた。それが自分のものばかりでなく、他のものまで肩に当てがって、

「少し地味ですけれど、好いわよ」

なぞと一々目利きするのだから容易でない。無念無想の一時間余りが過ぎて、各自一反ずつ家へ届けさせる段取りになると、時計の針は当然四時を指した。

「奥さま、私、忘れていましたが、清坊に約束がありましたの。一寸お附き合い下さいませ」

と内藤夫人は安子さんをエレベーターへ誘い込み、口先は急いでも中の鏡で顔を直したりして落ちついたものである。