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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

「不便なことがあるもんか。電車に乗れば東京だ。市内だって坐っていちゃ物を買えないぜ」

と木下君は大場君と同意見だった。郊外生活者は直ぐにこれを言う。但しこの筆法で行くと、下関の人でも汽車に乗れば東京だ。

「君のところは大変広いようだが、こんなに買ったのかい?」

「買うものか。自分で建てる分には買っちゃ引合わない。こゝは坪四銭だぜ」

「四銭は安い。幾坪ある?」

「五百坪ある。二十円だ」

「僕はこんなに要らない。三百坪あれば沢山だ。あるかね、近所に?」

「あるとも、しかし昨今は坪八銭から十銭だよ」

「十銭でも市内に較べれば安い。地面丈けでも検分して行って妻と相談して見るかな」

「然うし給え。斯ういう空気の好いところに住んでいて馬にでも乗れば、丈夫になるから子供が出来るよ」

「その辺も大いにあるね。一つ断行するかな」

と千吉君は益※(二の字点、1-2-22)動かされた。

「貸地といえば僕は四銭時代に借りて未だ建てない人を知っている。矢張り五百坪ぐらいだった。あゝいうのを貸して貰えると宜いね」

と大場君は思い出した。

「しかし五百坪は大き過ぎる」

「四銭なら千坪でも宜いよ。地代が上ったら半分又貸しをするんだ。