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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

「――その外人は発作のような号泣がおさまると、直ちにホテルを引きあげて東京へ帰り、そしてすぐ日本を去った。フランスへ行ったのだが、その外人は金持で、――通訳を勤めた友人を一緒に連れて行った」

「齢は同じでも金持というところが、僕らと違うね」

私はいわば自分から呼んでおきながら重苦しい空気に耐えられないで、それを払いのけるようにそう言った。

「――ところでそこにまた面白い話があるんだ。友人がフランスへ行くようになったについては……」

それには、こういう話があるという。箱根のホテルを引きあげる時、通訳が宿料を払うと、その一部を番頭がこっそり彼の手に戻した。なんだと聞くと、外人の観光客を連れてきてくれた謝礼だという。いらないというと、そのホテルではガイドにコミッションを割り戻す慣わしになっていると言う。「では、それだけ宿料が高くなっているわけだね。じゃ俺はコミッションなんかいらないから、それだけ宿料をまけて貰うことにしよう。ビルを書き換えてくれ」そう言うと、そんな工合にはいかないと言う。いかないわけはないじゃないか。――そんな押し問答をしているところへ、外人が現われて、なにを争っているのだと言う。