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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
そんな新派悲劇みたいなことが現実にあったということ、――あり得ないようなことが現実にあったということ、そのことの恐ろしさが私を打った。
私はそして、どういう加減か(そこには何かつながりがあるわけだろうが、自分ではわからなかった。)激しい感情の嵐のなかで、ふと小柳雅子の何かいたいたしい姿を思い浮べていた。
「僕は、そいで――」
とドサ貫は言葉をつづけた。「――あなたの顔を前から知っているのは、実は、そう言っちゃなんだが、そんな鮎子さんの亭主だったという人はどんな人だろうと、そう思って……」
「む――」
再び悶絶するような声を私は出した。
その私の傍には、旅回りの役者集めらしい男と、役者らしい男とが、片方の袖の中に両方で手をつき込んで、指でおしんしょ(給料)の話し合いをしていた。
「もう一本出して下さいな。ねえ」
瓢箪のような顔の眼の下を真黒にした三下風情の男が、しなをつくって、掻きくどいていた。
「つらいねえ」
と相手が言う。二人はそれで夢中で、私たちの方に眼もくれない。
外の国際通りを、号外売りが鈴を鳴らして、あたふたと走って行った。……
※(アステリズム、1-12-94)