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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
そこで脇から手を翳すようにしたが、そもそもガス焜炉はそういう仕掛になっているのだろう、脇へはウソみたいに熱を放射しないのである。熱を受けるには、やはりまっすぐ炎の上に手を置かなくてはならない。それがまた随分上でも熱いのだった。そして手を上下させてしらべて見ると、熱いところから急に熱くない冷たいところへと急変的に移り、その間に、ちょうどいい工合だと思われるような、暖かいという部分を持ってなかった。私は、あまり頼みにならない代用品だと落胆しながら、それでも手をまめに裏返しては、あぶっていると、そのうち自分の痩せ細った骨と皮だけのような手が、なんだか火に焼かれている鯣の足かなんかみたいに哀れ深く見えて来て、いやな気持になった。
私は火鉢の火が恋しくなった。「――そうだ。お好み焼屋へ行こう」
本願寺の裏手の、軒並芸人の家だらけの田島町の一区画のなかに、私の行きつけのお好み焼屋がある。六区とは反対の方向であるそこへ、私は出かけて行った。
そこは「お好み横町」と言われていた。角にレヴィウ役者の家があるその路地の入口は、人ひとりがやっと通れる細さで、その路地のなかに、普通のしもたやがお好み焼屋をやっているのが、三軒向い合っていた。