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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
すると、そこへ、
「――お、寒い」
美佐子が乱暴に玄関をあけた。「あら、倉橋さん」
「やあ、今晩は」
美佐子は立ったまま靴をぬいで、なかに入り、
「――あら」
鉄板の字から私に眼を移して、
「それ、――倉橋さんが書いたの?」
「うん」
「雅子、知ってんの」
「――僕の恋人」
「恋人?」異様な声を挙げるのに、
「いや、冗談ですがね。僕のとッても好きな子なんだ」
「……!」ずっと立ったままの美佐子が、私を険しく見据えた。私は眼を逸らせ、「子」の字をパクリと口の中へ入れた。
「あッちち……熱い」
美佐子が私の前にべたりと坐った。私は口をアグアグいわせながら、
「君は、小柳さん知ってんの。――いや同じ浅草にいりゃ知ってるわけだね」
私はドギマギして、ひとりでしゃべった。
「それより君、この間ドサ貫ク――ああ言いにくい、ド、サ、貫、クンに会って、大変な話を聞いた。驚いたね。――君はなぜ、僕に話の半分しかしないで、みんな言わなかったのかね」
そこへ「惚太郎」の主人の惚太郎が、外から帰ってきて、話はそのまま中断されてしまった。
「滅法冷えやがる――いらっしゃいませ。外は冷えますな。――坊やは、と、(三畳間をのぞいて)寝ているな。