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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

でもしているようで、かくして両手を蒲団のなかに入れ、早く暖めようために、手を腿のあたりに差しこむと、まるで氷をおっつけられたような冷たさにヒエッと叫びながら、もうこう寒くなってはアパートに泊ることはできないなとつぶやくのだったが、実は寒いのに大森まで、私の感じでは全くはるばると帰って行くのが億劫なままに、つまりその寒さのために泊ったわけでもあったのだ。

――もう一時を過ぎていて、いやそのアパートは、夏頃などは夜中の十二時半から一時半頃までが、アパートの一日で一番賑やかな時なのだが、たとえば、その時刻に、あたしゃ酔っちゃいないよなどと舌の回らぬひとりごとを言いながら、危なっかしい足どりで階段をドタンドタンと昇ってくる女給さんたちも、夏頃は、ひとりで部屋に戻っても、店の興奮がさめないのだろうか、何かとひとりで騒いだりし、時にはひとしく酩酊した朋輩を連れてきて部屋のなかでキャッキャッと動物のような声を立て、しまいには喧嘩をしたり泣き出したり、なかなか大変なのだが、そうした騒々しいアパートの住居者たちも、千鳥足は夏場とかわりないが、寒いので精神が阻喪しているのか、すでにひっそりと寝についている気配である。