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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

はぐうたらな精神を刺激され、興奮させられた。

「私も張り切らんといかん!」

例によって私と朝野は地下鉄横町の「ボン・ジュール」に行ったのだが、その途中の新仲見世通りで私は、私が浅草へ来る前にうろついていた銀座の、その裏の方にあるとある「特殊喫茶」で顔なじみの、そこのいわゆる喫茶ガールの一人に偶然会った。もう随分その店へ行かないが、向うでも私の顔を覚えていたと見え、雑踏のなかに私の姿を発見すると、――まずいのに会った、そんな顔を横にそむけた。

その女の横には、男がいたのであるが、女のその顔のそむけ方で、その男がその女にとってどういう意味のものであるかが明らかにされた。

そうだ。私は今まで書かなかったが、こういう工合に銀座の女たちがランデヴーに浅草を利用しているのに、ひょっこりぶつかるのは、これが初めてではなかった。そして女も私も双方とも、この場合のように気まずい思いをするのは、これでもう何度目ぐらいか。かくて私は、銀座の女たちが、浅草だったら、店の客に会わないだろう、店へ来てうるさい噂を立てるようなのに会う心配はないだろう、そう思って、浅草をあいびきの場所に選んでいることを知ったのだが、私の存在はその安心にいやな翳を投じたのであり、そしてまた顔をそむけられたことによって私はくだらぬ噂を立てるようなくだらぬ客