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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

そしていつも、お客のようでありながら、お客にしては気のききすぎる手伝いをしていた。――ここの、三十をちょっと出た年恰好の、背のすらりとした、小意気な細君を美佐子は「お姉さん」と甘えるように言っていた。(この「お姉さん」というのは、ねに強いアクセントを置き、さんは「さん」と「すん」の間の音で、言葉では現わし得ない微妙な甘さである。美佐子は、黙って放って置くと、いかにも気の強そうな、男を男とおもわぬ風の女としか見えない、――たとえば墨汁をたっぷりつけた大きな筆で勇ましく書いた肉太の「女」というような字を思わせる、圧迫的な印象をやや強烈にまいているのだが、時々、そうした甘い言葉のうちに、おや? とびっくりさせる優しさを放射した。)――ここの細君は美佐子を「ミーちゃん」と妹のように、(あるいは愛する猫に向ってのように)呼んでいた。

レヴィウの幼い踊り子たちは、親しい男性を呼ぶ時、いかにも人なつこい調子で「お兄さん」と言う。私は美佐子が「お姉さん」と言うのを聞くたびに、心をふるわすその甘さをそッと捉えて、「お兄さん」という言葉を、それに当てはめた。私は眼をつぶって、ひそかに、その甘い調子になぞらえて、