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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
視線が合うと、彼女はあわてて、その膨れぼったい眼を逸らしたが、すぐまた勝気に前に戻して、
「おたく、倉橋さんッて言うんですってね」
倉橋というのは私のほんとうの名である。私は苦笑しながら、
「――誰が言った?」
その言葉で私がみずから倉橋であることを認めたことになる。
「――やはり倉橋さんというのね」
うんとうなずくと、
「小説家の倉橋さんね」
とさらに念を押す。私はどういうものか、小説家と言われると妙に照れ臭いので、おでこをむやみに掻きながらうなずくと、
「倉橋さんッて、前に奥さんと別れた……その奥さんが、倉橋さんと別れてから女優さんになった……。その倉橋さんね」
ひどい念の押し方である。私はことごとく照れて脂の浮いた汚い顔を撫でくり回した。
「たったいま、おたくが倉橋さんだって聞いたんだけど、――驚いたわね」
「いま聞いた?」
「ドサ貫ちゃんが教えてくれたの」
そう言われれば二人は台所の隅で私の方にチラチラと眼をやりながら何かコソコソ内証話をしていた。私はそれを、座の連中が二人をからかったことに結びつけて見ていた。
「ドサ貫君が?」
つづけて言おうとするのを抑え、急き込んで彼女は言った。