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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

二人ともしばらく黙って突き立っていた。するうちえたいのしれない焦燥が私のうちに燻りはじめ、美佐子のうちにもひとしく何か焦燥が燻り出したらしいのが私に感ぜられた。美佐子が突然、突っかかるように言った。

「倉橋さんは、なんで浅草をブラブラしてんの?」

「――さあ」正面切って説明するのが億劫だったので、言葉を濁した。

「ネタ取り?」

「そうじゃない」

これは、はっきり言った。

「じゃ、なアに」

「――浅草が面白いからさ」つい、出まかせを言った。すると美佐子は顔をしかめた。暗いなかでもはっきりとわかるしかめ方であった。そしてきびしい調子で、おたくは猟奇の気持で浅草をブラついているのかと言った。――猟奇という言葉を初め耳にした時、私はそれとわからないで、え? と首をかしげたが、あ、そうかと気づくと、珍しい言葉にめぐり合った感じが微笑を呼び、黙って微笑していた。美佐子は靴先をコツコツと鳴らしながら、

「但馬は猟奇趣味で浅草を見る人を、とても嫌っていたわ」と言った。

但馬はと美佐子が言うのが、いかにも私には唐突の感じだったので、「ふーん。但馬さんがね」と私は言った。(その後、しばしばそうした唐突さに会っているうちに、私は慣れて、唐突を感じなくなったが、それと共に、美佐子のそうした唐突さは、彼女の心のうちに、何かというと但馬が入っ