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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

「やあ、朝野君。どうぞ」

朝野は扉を開けて、

「おや、もう寝てるんですか。この頃は泊っているんですか」

そして私の返事を待たず、

「――せんの頃は、夜来ても、いつも留守だった。で、もうこの頃は、来るのを諦めていたんだが」朝野は酒の入った光った顔を、あたかも猟師が獲物をつかまえた時のような満足と喜びで一層光らせていた。「昼間はおられるんでしょうが、勉強の邪魔をしてはと遠慮してましてな」

私は浅草に住んでいる朝野を、私の方からついぞ訪ねたことがないのに、ふと慚愧の情を覚えさせられ、言い訳めいたことを言おうとすると、朝野は私に口を開かせまいとしているごとくに、

「倉橋君の浅草生活も、いよいよこう泊り込みで、本格的になってきたですな」

と言った。なんと挨拶していいか、うまい言葉が見つからず、私は曖昧な微笑を浮べながら、寝間着の上に着た着物の前を合わせていた。すると、朝野が、

「――あまり感心しませんな」

と言った。これは一層挨拶に窮する言葉だった。

「仕事の方はどうですか」立てつづけに言う。

機銃にタタタと打ち込まれる感じで、

「――駄目ですね」

と私は言って、へたばるみたいに蒲団の上に坐り込んだ。