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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

)その七カ月の間に、私が書いたことといったら、ああなんと、たった一日の話。もとより物語も一向に進展を見せてない。これがもし達者な作家であったなら、その間に、たとえば五カ年とか、七カ年とかにわたる波瀾万丈の物語を展開したかもしれない。なんとかして貰いたいねと、さすがの私も、そう私が私に言う声を聞く。私は、なんとか物語のテンポを早くするように計らねばならぬ。

*

約束通り、朝野光男はアパートを訪ねてきてくれて、私はアパートを出た。

国際通り(国際劇場のある通り)へ出る角に、自転車の預り所があり、朝野は言った。

「――預けて行ったきり、そのまま取りにこないのが、よくあるそうですな。小僧かなんか、なんでしょうな。使いに出たすきに自転車を預けて、ちょいと活動でも見るつもりが、ついうかうかと遊んでしまって、もう主人のところへ帰れない。で、自転車をおッぽり出して、逃げちゃう。そういうのらしい自転車が、しょっちゅうあるそうですな」前夜と同じように、朝野は饒舌だった。

国際通りへ出ると、折から国際劇場の松竹少女歌劇の昼の部が撥ねたところらしく、そのお客らしい華やかな少女の群が舗道をいっぱいに埋めて、田原町の方へと流れて行く。