轻松读懂日语经典作品
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
近所のかみさんたちの話では、お尻を裸にして、物差で打つのだという。蜜をたっぷり掛けたプディングのような甘やかな声と、骨まで凍るような折檻の音とは、そのまますさまじい和音となって、聞く者の耳を突き刺すのであった。
ごめんだよう、とじんの悲鳴が聞える。もうしないよう、痛いよう。勘弁だよう。ぴしりっ、ぴしりっ。嘘じゃない、学校へいくよう、あれ死んじゃうよう。ぴしりっ、ぴしりっ。そんな大きなお声をだすとご近所のご迷惑になることよ、ぴしりっ。もっと静かになさいな、ぴしりっ。泣きまねなんかなすってもだめ、ぴしりっ。そんなに痛いものですか、かあさまは騙されませんわよ、ぴしりっ。
やがて、いつもそうなのだが、じんは母の手をのがれて外へとびだし、そこでたちまち叛逆の狼火をあげる。鬼ばばあ、くたばっちまえ――、という第一矢でそれは始まり、相当な無頼漢でも思い及ばないような、豊富な語彙を駆使して呪いと悪罵と嘲弄をあびせかける。むろん隣人のことなどへとも思わないし、もしも好奇心をおこして、その騒ぎを見に来るような者があれば、じんは少しのためらいもなく石や棒切れを投げつけるのだ。