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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
がんもどき
「とうちゃんだ」と云って次郎が手をあげ、次に太郎、続いて四郎、花子が「とうちゃん」と云って手をあげた。梅子は話がよくのみこめなかったのだろう、みんなの顔を眺めまわしてから「あたいはねえちゃん」と云って花子を指さし、みんなが笑いだした。
「本当の親か、本当の子かなんてことはね、誰にもわかりゃしないんだよ」良太郎は仕事に戻りながら、いかにもやわらかに云った、「お互いにこれが自分のとうちゃんだ、これはおれの子だって、しんから底から思えればそれが本当の親子なのさ、もしもこんどまたそんなことを云う者がいたら、おまえたちのほうからきき返してごらん、――おまえはどうなんだって」
返辞のできる者がいたらおめにかかるよ、と云って良太郎はごくぼその針金をきゅっと緊めた。太郎は黙ってつやだしをしていた。
がんもどき
かつ子は十五歳になる。同じとしごろの少女に比べると、背丈も低いし肉付きも悪く、胸も平べったいし腰も細かった。肌はつやのない茶色で、きめが荒く、腕や脛にはかなり濃い生毛が伸びていた。――きりょうもよくはない、どこがどうとはいえないが、ぜんたいとして少女らしい新鮮さがなく、生活の苦しさをつぶさに経験した中年の女、といったような印象がつよかった。