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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

警察から呼び出しがあっても、おれは関係がない、かつ子はおまえの姪だ、と云って京太はそっぽを向く。おたねはさからおうともせずでかけてゆき、父親はどうしたときかれれば、京太に教えられたとおり、病気で来られないと答えるのであった。

かつ子の調べは少しも進まなかった。どう手をつくしても、犯行の理由を云わないのである。

「きみのわるい子だよ」と刑事の一人は云った、「なにをきいても黙りこんだままでね、ときどき歯を剥きだすんだ、笑うのかと思うとそうでもないんだな、唇がこうゆっくりとひろがって、そうすると歯が見えてくるんだがね、よく観察すると笑うんじゃないんだな、猿を怒らせるときーっといって歯を剥きだすが、あれでもないんだ、笑うんでもなし怒るんでもないんだ、見ているとぞーっとするね、ああ、きみのわるい子だよ、まったく」

おたねは草田病院へもみまいにいった。岡部定吉は幸運にも死なずに済み、全治三週間と診断された。刺し傷は胸であったが、僅かに心臓をそれたのが幸運で、輸血もうまくゆき、刺傷部の状態もおおむね良好ということであった。

「どうしてこんなことをされたかわからない、ぼくはかっちゃんが好きだったんです」