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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页
から、かっちゃんを罪にすることはないんじゃないでしょうか」
おたねからその話を聞いたとき、京太はそれみろと云った。自分に悪いことをした覚えがあるからこそ、こんなことを云うんだ。わけもなく出刃庖丁で殺されそくなって、憎くもうらめしくもないなんて、おまけに罪にしないでくれなんてばかなことを云う者が、どこの世界にいるものか、それだけでもう自分の悪事を白状したも同然だぞ、十六や十七でふとい小僧だ、などと罵った。
おたねは内職仕事に追われながらも、伊勢正へいったり警察へいったり、草田病院へみまいに寄ったりした。伊勢正とは岡部少年の治療費と、かつ子を貰いさげにする相談であった。金のほうは妹のかなえに、およその事情を書いて頼みの手紙をやったが、貰いさげのほうはかつ子が頑強に沈黙したままなので、警察のほうで心証を悪くし、すぐには事がはこびそうもないようなぐあいだった。
こうして、十幾たびめかに警察へ呼びだされたおたねは、帰って来ると京太に向って、十八歳未満の娘と関係した者は、事情によって暴行罪になるそうだ、という意味のことを云った。
「そりゃあそうだろう」と京太は横にねそべって、酒臭いおくびをしながら云った、「あの小僧は十七でも男だからな、戸籍上の親であるおれたちが告訴すれば、暴行罪になるのは当然だ」